<第2話>
Tさん:すいません、外出していたものですから。
何かありましたか?
タモツ:いえ、先日はありがとうございました。
色々と参考になりました。
今日電話したのは、別件、といいますか、聞きたいことが
できてしまったものですから。
Tさん:そうですか、私で分かることでしたら、お答えしますよ。
タモツ:ありがとうございます。
実は、先日Tさんが言っていたプライバシーマークの事なんですが・・・
Tさん:ああ、あれね。
取得する気になったんですか?
タモツ:それが、おはずかしい話なんですが、あまりよく覚えていなくて・・・
でも、Tさんが個人情報の保護についてお詳しいのではと思いまして。
Tさん:う〜ん、詳しいってほどではないですけど、一応プライバシーマーク
の使用認定を受けていますからね。
タモツ:プライバシーマークって資格じゃないんですか?
Tさん:あれは、「財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)」というところが
プライバシーマークというマークを使用する認定をしていて、ある一定の基準
がなければ、認定されないというものなんですよ。
タモツ:そうなんですか。(資格じゃなかったんだ、ほっ)
プライバシーマークについても、もっとお聞きしたいんですが、
それよりも、まず先にお聞きしたい事がありまして。
Tさん:なんですか?
タモツ:先日もお話したんですが、うちの会社でも通販事業をやるんです。
その際にうちの会社にあった顧客情報のリストを使おうと思ったんですが、
どうも、個人情報保護法の観点からすると、どうやらDMを送ったりする事に
使ってはいけないようなんですが、それが本当かどうか知りたいと思いまして。
Tさん:その顧客情報は直接収集したものなんですか?
タモツ:直接収集?
Tさん:そう、直接御社で集めた情報か、それとも間接収集、他の会社で集めた情報なのか
によってもこれから話す内容にちょっと違いがあるんです。
タモツ:そうなんですか、今回利用しようとしている顧客情報は、うちの営業マンが
集めた情報です。
Tさん:そうですか、では直接収集した情報なんですね。
収集する際に何の為に情報をお聞きしているのか、お客様に言っていますか?
タモツ:どうだろう、その時は、個人情報の収集というよりは、アンケートに答えて
もらって、プレゼントを差し上げていたんですが、目的は、うちの商品
に類似した商品に対する評価を集計するためだったんです。
Tさん:では、お客様は、プレゼントを送ってもらう為に名前や住所を教えて
くださったわけですね。
タモツ:結果的にはそういう事になります。
Tさん:じゃあ、なんの連絡もなしにDMは送れないですね。
タモツ:やっぱりそうなんですか。
Tさん:個人情報保護法では、利用目的の特定をしなければならないんです。
また、利用目的を変更する場合にも、変更前の利用目的と常識の範囲以上に
違ってはならないんです。
タモツ:そうなんですか。でも常識の範囲っていうのが微妙ですね。
Tさん:確かにそうなんです。法律っていうものは表現があいまいにできているんですよね。
タモツ:そんなに面倒な制約があるんじゃ、DMなんか簡単に送れなくなっちゃいますね。
Tさん:でも、日本の個人情報保護法はまだよくて、フランスなんかでは、個人情報のリストを作るたびに個人情報監督
機関「CNIL(クニル)」への届け出が義務付けられていて違反した場合、最高で禁固5年、30万ユーロ
(約3900万円)の罰金なんですよ。
タモツ:そうなんですか。それは厳しいですね。
Tさん:でも、色々と制約があるようにみえる個人情報保護法なんですが、実は意外に
簡単にクリアできる事もあるんです。
タモツ:えっ、そうなんですか、是非教えて下さい。
Tさん:うちの場合、通信販売中心で営業しているので、DMはよく送るんです。
送り先は基本的には、いままでうちで買い物をしてくださったお客様なのですが、
買い物をしてくださった方に商品を贈る際に別紙を同封しているんです。
タモツ:ふむふむ。
Tさん:その別紙には、「この度は、お買い上げいただきましてありがとうございます。
今後もお客様にお得な情報を送らせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
もし今後は情報のお知らせをする必要がないという方は、お手数ですが、以下のメールアドレス、
又は、電話番号にて不要の旨をお知らせください。」
というような文面を載せているんです。
タモツ:そうか、何気に同意を得ているんですね。
Tさん:そうなんです。もちろん、不要の連絡をいただいたお客様にはDMは送れなくなって
しまいますが、意外に不要の連絡をしてくるお客様は少ないもんなんです。
タモツ:そうですよね、お得な情報と聞いて、その情報を聞かない手はないですし、
それに、いちいち不要ですなんて伝えるのが面倒ですよね。
Tさん:まあ、売り手側が考えた手段ではあるんですが、逆の立場で考えると、面倒な時代に
なりましたね。こういう商売をしていると、個人情報も自分で守らなければ、いけない
時代になったんだなと感じます。
タモツ:そうですね、自宅にも色々な会社からDMってきてますからね。
Tさん:今はまだ法律が施行されていないから、いいけど、施行された場合、
6月以下の懲役または30万円以下の罰金なんて事もありえるんだよ。
タモツ:そっか、でも、刑罰よりも、企業としてはイメージダウンになるのが
一番痛いですよね。
Tさん:いいところに気が付いたね、すぐには現れない痛手なんだけど、
意外に売上なんかに響くところだろうね。
そういった利用目的の違反もそうだけど、情報が漏洩した場合は、かなり
のイメージダウンになるだろうね。
タモツ:そうですよね、情報が漏れた方からすれば、その会社の関係者は信頼がおけない
って事になるわけですからね。
Tさん:ところで、タモツさん、御社では、お客様の情報のやりとりをする場合、どうしているんですか。
タモツ:そうですね、サーバ上に共有フォルダを作ってそこをみんなで見ているんです。
情報を共有する事で、常に最新の情報をみんなが見れる状態にしているんです。
Tさん:その共有フォルダはファイアウォールとかでそのフォルダを見れる人と、みれない人
の区別をしているんですか?
タモツ:う〜む。その辺の事はあまり詳しくないんで、帰ってうちの課長に聞いてみます。
Tさん:結構大事な事だから、確認しておいたほうがいいですよ。
タモツ:そうなんですか。
あっ、もうこんな時間だ、すいません、なんか長い時間話してもらっちゃって、
もう少し、お聞きしたいことがあるんですが、どうしても行かなければいけない
お客さんがあるものですから。
Tさん:タモツさんも忙しいですね。
タモツ:すいません、こちらからお願いしてお時間を作っていただいたのに。
Tさん:いいですよ。また何かあったら連絡して下さい。
お互いに忙しい身ですから、メールとかでもいいですよ。
タモツ:ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えてまた連絡させていただきます。
Tさん:遠慮しないで下さい。その分仕事まわしてください。
タモツ:そうですよね、そのくらいしないといけないですよね。では、ありがとうございました。
Tさんの会社を出たタモツは、次のお客様の所へ行く途中で、Tさんの言っていた事を
色々と考えていたが、どうも最後にTさんが言っていたファイアウォールが気になっていた。
タモツ:(う〜ん、考えていてもしょうがないか、帰ったら課長に聞いてみよう)
つづく・・・